出産祝いのお返しにいただいた品。

アンリ・シャルパンティエのクッキー。

美味。

関西にいた頃、アンリはまだ芦屋にしかなく、女子にそれはそれは大人気のケーキ屋さんだった。

それがいまや関東に進出して全国的に有名なお店に。

一つ上の学年だが年は三つ上のきづさんという先輩がいて、そこでバイトしていた。

きづさんはコワモテでどう見てもその筋の方にしか見えない人で、実際、高倉健さんの役柄のように曲がったことが嫌いで男気があってとてもケーキ屋さんでバイトしている風には思えない。勧められた酒を断ろうものなら血を吐くまで飲まされそうな雰囲気だったので後輩は誰も彼の酒を断れない。

でも飲み会なんかでは顔に似合わず突然アンリのケーキや焼き菓子を持ってきてくれる。

こっちは日々餃子の王将と天下一品のラーメンを楽しみに暮らすビンボー学生だったので、喜びに沸く女子を前にそのありがたみをいまひとつ実感していなかったが、美味しかったことだけは覚えている。

そのアンリのクッキーを久しぶりに食べたのできづさんを思い出した。

アンリにそのまま就職したと聞いたので、もしかしたら今もお店にいるかもしれない。切れ長の鋭い目で睨みを利かせながら笑顔で応対するきづさん・・・。その姿だけはいまだに想像できん。



アンリ